AIロープレの作り方|ChatGPTで自作する手順と、顧客役より先に決める「採点基準」
AIロープレはChatGPTなどの生成AIで自作できます。顧客役プロンプトの5要素、裏設定で「引き出す力」を鍛える設計、採点役プロンプトの作り方、機密情報の扱い、自作で足りる範囲と専用ツールに移る目安までを手順で整理しました。

ChatGPTに「お客様役をやってください」と頼んで、商談の練習をしてみる。最初の1〜2回は面白い。ところが3回目あたりから、何が良くなったのかが分からなくなります。AIは毎回「素晴らしい提案でした」と褒めてくれるし、指摘される点も回ごとに変わる。練習はしているのに、上達している実感がない——自作のAIロープレが行き詰まるのは、たいていこのパターンです。
原因は、顧客役の出来ではありません。
AIロープレの作り方で差がつくのは、顧客役のプロンプトではなく、採点役のプロンプトです。 顧客役は10分で作れます。採点役は「自社にとって何が良い商談か」を決める仕事で、ここを飛ばすと、AIロープレは「よく喋る練習相手」で終わります。
この記事では、生成AIでAIロープレを自作する手順を、顧客役・裏設定・採点役・運用ルールという4つの部品に分けて解説します。最後に、自作で足りる範囲と、専用ツールを検討する目安も整理します。
自作AIロープレの4つの部品
自作のAIロープレは、次の4つの部品でできています。多くの人が作るのは1つ目だけで、残りの3つが抜けたまま使い始めています。
| 部品 | 役割 | 作る手間 | 飛ばすと起きること |
|---|---|---|---|
| 顧客役プロンプト | 商談相手を演じる | 小(10分ほど) | —(ここは誰でも作る) |
| 裏設定 | 顧客役だけが知る情報を持たせ、引き出す力を鍛える | 小 | 台本の読み合わせになり、ヒアリングが鍛えられない |
| 採点役プロンプト | 決めた基準に沿って講評する | 中(自社の基準づくりが要る) | 毎回褒められて終わる。回ごとに指摘が変わる |
| 運用ルール | 機密の扱い・記録・頻度を決める | 小 | 社外秘を入力してしまう。やりっぱなしになる |
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順に作っていきます。
手順1: 顧客役を作る — 5つの要素
顧客役のプロンプトに入れる要素は5つです。
- 立場と決裁権。役職、決裁者か稟議を上げる側か
- 現状と課題。いま何を使っていて、何に不満があるか
- 性格と話し方。論理的か、慎重か、せっかちか。質問への返し方
- 抵抗。出してくる断り文句や反論(「今は間に合っている」「上に相談しないと」など)
- 終了条件。何が起きたら商談が終わるか(「商談終了」と言ったら講評に移る、など)
コツは、簡単には納得しないよう指示することです。生成AIは放っておくと聞き分けのよい顧客になり、練習になりません。「説明が具体的でないときは鋭い質問で切り返す」と一言入れるだけで、手応えが変わります。そのまま使える基本のプロンプトの型は、AIロープレは無料でできる?に載せています。
手順2: 裏設定を仕込む — 「引き出す力」はここで決まる
顧客役ができたら、次に裏設定を足します。裏設定とは、顧客役だけが知っていて、営業役(自分)には見えない情報のことです。本当に困っていること、予算の上限、競合を検討している事実——実際の商談では、こうした情報は聞き出さない限り出てきません。
対人ロープレで効果が出るケース型のやり方も、営業役とお客様役に渡す情報を変える「情報の非対称性」が核になっています。自作のAIロープレでこれを再現するには、顧客役に「聞かれるまで言わない」情報を持たせます。
ただし、自分でプロンプトを書くと、自分が裏設定を全部知ってしまうという矛盾があります。対処は簡単で、裏設定をAIに作らせます。
上の顧客設定に加えて、あなただけが知っている裏設定を3つ決めてください。「本当の課題」「予算の目安」「競合の検討状況」です。裏設定は私に見せず、私が適切な質問をしたときにだけ答えてください。商談が終わったら、裏設定を開示し、私がどこまで引き出せたかを教えてください。
これで、ヒアリングの練習が「知っていることを確認する作業」から「知らないことを引き出す練習」に変わります。
手順3: 採点役を作る — ここが本体
さて、本体です。採点役のプロンプトは、顧客役の後ろに付け足すおまけではなく、AIロープレを育成の道具にするかどうかを決める部品です。
国立・私立3大学との共同研究の一環で実施した営業実態調査では、ロープレを実施している企業でも、定量的な採点を行っていないケースが少なくないことが分かっています。対人でも起きているこの問題は、AIロープレでも同じように起きます。基準を渡さなければ、AIは印象で褒めます。
採点役のプロンプトに入れるのは4つです。
- 評価項目と配点。話し方の印象ではなく、商談プロセス(事前準備・アプローチ・ヒアリング・プレゼンテーション・クロージング)に沿った行動で書く
- 根拠の引用。点数の理由として、実際の発言を引用させる。引用のない採点は、印象評価と変わらない
- 良かった点から、直す点は1つ。改善点を10個並べられても次の練習に活かせない
- 合格の状態。「何ができていれば合格か」を先に書く。書かないと、採点は回を重ねるほど甘くなる
型はこうです。
ここからはあなたは評価役です。次の5項目を各20点で採点してください。
・アプローチ: 面談の目的と進め方について、冒頭で合意を取れたか
・ヒアリング: 表面的な要望の奥にある課題・背景に踏み込む質問ができたか
・ヒアリング: 相手の回答を深掘りする質問ができたか
・プレゼンテーション: 聞き取った課題に対応した提案になっていたか
・クロージング: ネクストアクションを整理し、相手と合意できたか
各項目について、点数の根拠として私の実際の発言を引用してください。引用できない項目は0点にしてください。合格は、各項目で「できた」と判断できる発言が1つ以上あることです。講評は良かった点を先に述べ、直すべき点は1つに絞ってください。
評価項目は、自社の商談に合わせて言葉を差し替えてください。ここで書く項目がそのまま「自社にとって良い商談の定義」になります。項目の考え方は、AIロープレの採点は信頼できるかでも詳しく解説しています。
手順4: 運用ルールを決める — 機密・記録・頻度
最後に、3つの運用ルールを決めます。
- 機密の扱い。実在の顧客名・自社の実際の価格や値引き条件・社内の数値を、プロンプトに書かない。「中堅商社の購買部長」「月額数十万円帯」のように置き換える。個人アカウントの生成AIに社外秘を入力してよいかは会社の生成AI利用ルールで確認し、ルールがまだない場合は、それ自体を先に決める
- 記録。採点結果を、日付・シナリオ・点数・直す点1つの4列でスプレッドシートに残す。残さないと「先月より良くなったか」が分からない
- 頻度。「1回15分、週2回」のように枠を決める。5分の商談、講評、もう一度5分、という組み立てが回しやすい
ここまでで、自作のAIロープレは一通り完成です。
自作で足りる範囲と、専用ツールを検討する目安
実際のところ、個人の練習であれば、ここまでの自作で十分に機能します。新しいトークの試し打ち、大事な商談の前の頭の整理、抵抗への切り返しの反復——これらに専用ツールは要りません。
限界が見えてくるのは、自作を「チームの育成施策」に広げようとしたときです。次のサインが出たら、専用ツールを検討する段階です。
- メンバーごとに採点プロンプトが違い、基準がバラバラになっている
- 各自のチャット履歴に結果が散らばり、誰がどこでつまずいているか集まらない
- 裏設定をAIに作らせても、シナリオを自分で用意する構造は変わらず、ヒアリングの練習が甘くなりがち
- プロンプトに書いてよい情報の線引きが曖昧で、機密の扱いに不安が残る
- AI相手の練習と、対人ロープレ・実商談の評価が別のものさしで動いている
無料の生成AIが劣っている、という話ではありません。個人用の道具を組織の仕組みとして使うには、基準の統一・記録・管理という部品を別に用意する必要がある、という話です。無料と法人向けの違いはAIロープレは無料でできる?で、サービスの横並び比較はAIロープレツール比較の記事で整理しています。
シナリオづくりを軽くする方向と、基準を最初から持つ方向
法人向けのAIロープレにも、自作の延長線上にある方向と、自作では作りにくい部分を最初から備える方向があります。
UMU AIロープレは、公式サイトで「スクリプト作成用プロンプト」を使ってAIが自社向けのスクリプトを生成・調整できることや、評価基準(アセスメント)を自社独自に変更できることを案内しています(2026年9月時点の公式サイトより)。この記事でいう手順1〜2の手間を軽くし、学習プラットフォームの中で練習を回していく方向のサービスです。
Brain Plus for Sales は、手順3の採点役を最初から備えている方向の営業特化AI商談シミュレーターです。採点の基準となる「5ステップ70スキル」は、2,000名以上のトップセールスモデルの営業行動・トークを、事前準備からクロージングまでの5つのステップと70のスキルに分解した体系で、自社の採点プロンプトをゼロから書かなくても、商談プロセスに沿った採点を受けられます。
手順2の裏設定にあたる「営業担当者からは見えず、顧客役AIだけが知っている情報」も設定でき、適切に情報を引き出せたかを試せます。難易度は初級者向けから段階的に選べ、対人ロープレの採点や実商談の録音解析にも同じ基準が使えるため、練習と本番の物差しが揃います。評価基準は自社独自のものに変更することも可能です。
一方で、個人で試す段階なら、この記事の自作で十分です。また、70項目の体系は出発点であって、自社の商材やお客様に合わせて重視する項目を選び直す作業は、道具を入れても残ります。
まとめ
AIロープレの作り方の要点は、次の3つです。
- 顧客役は10分で作れる。差がつくのは採点役。評価項目は商談プロセスに沿った行動で書き、根拠の引用と合格の状態を先に決める
- 裏設定をAIに作らせて、「知っていることを確認する作業」を「知らないことを引き出す練習」に変える
- 機密・記録・頻度の3つのルールを決めてから始める
まずは手順1から4を、1つのシナリオで一通り回してみてください。採点役のプロンプトを書く作業そのものが、「自社にとって良い商談とは何か」を言葉にする最初の一歩になります。
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- 主要サービスの比較: AIロープレツール比較の記事
参考URL
Brain Plus for Sales
「採点の基準」から作られた商談シミュレーターを、実際の画面でご確認いただけます。